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『みどりのくに』プロジェクト

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そのプロジェクトは今から3年前に始まった。

 

横須賀市立武山小学校の敷地には、恵まれた自然環境が以前からあった。それは、昭和52年に完成した『緑の国』という名の裏山だ。

 

しかし、その裏山は、学校の先生ですら分からない期間、手付かずの状態で放置され荒れ放題だった。

 

光も入らず、見通しもきかないその裏山は、立ち入れば、学校の敷地内にもかかわらず遭難してしまいそうなほど草木で覆われていた。ゆえに立ち入り禁止状態となっていた。

 

大人になった卒業生や保護者からは裏山の今を気にかける声があった。

 

そんな声の大きさや裏山の状況を見かねた前校長と前PTA会長が発起人となり、『みどりのくに』プロジェクトが立ち上げられた。

 

それは荒れた裏山を子どもたちが遊べる昔の裏山に戻し、そして後世に繋げていくというものだ。

 

『みどりのくに』プロジェクトに参加するのは、武山小学校児童の父親や地域の方たち。その父親たちの中には当時の裏山を知る卒業生もいた。

チェーンソーも慣れたもの

裏山を復活させるべく立ち上がった数十名の頼れる親父たち。草刈り機やチェーンソー、ナタ、ノコギリを使い、雑草や笹、朽ち果てた倒木などを取り除いた。

何もない『みどりのくに』

薄暗く、人が入るのを拒んでいた裏山に光が差し、まるで別の場所のようになった。そこには小道や当時の階段、子どもたちが遊ぶのに十分な広場が現れた。

現れた小道

 

前校長が言った。
「これで明日から子どもたちに『みどりのくに』を開放できます」と。

 

ついに『みどりのくに』に子どもたちの声が戻ってきた。

 

〜何もない『みどりのくに』〜
復活をとげた『みどりのくに』にはこれと言った遊具は何もない。それがこの『みどりのくに』の良さであり、本来、裏山や里山と呼ばれる場所のあるべき姿だ。

 

今から30年前、小学生たちは何もない裏山で遊んでいた。

 

そこでは、秘密基地を作ったり、笹で弓矢を作ったり、虫取りをしたり、自分たちで遊びを考え、作り、ルールを決め、遊んでいた。

 

大きな小学生こと頼れる親父たちは、子どもたちに遊びのヒントを残している。

 

ターザンロープとして使えそうな蔦は取り除かず何気なく残した。パチンコ制作に使えそうなY字に枝分かれした枝や、弓矢に使えそうな笹も放置してある。ただし、これらをどう使うかは子どもたちに委ねられる。

 

子どもたちは、大人の予想とは違った遊びを作り出すかもしれない。誰かから与えられた遊びや、大人が作ったアトラクションではなく、自分たちで遊びを創造するのが一番楽しいことを親父たちは理解している。

 

もちろん危険なものはしっかり排除してある。切り傷や擦り傷を避けることは難しいが、大怪我をしないような配慮がされている。

 

倒れかけた木や竹などは排除され、大きな蛇や刺す虫などは駆除もしくは、裏山の一番奥に放たれた。

 

しかし、小さな蛇などはそのままだ。親父たちは知っているのだ、蛇を素手で捕まえられる子どもは、裏山のリーダーになれる素質があることを、みんなから尊敬され、リーダーになる資格を一つ手に入れられることを。

 

また、虫を捕まえるとき、どの木にたくさん虫が集まるのか、それを見抜くのもリーダーの素質の一つだ。分かる人には分かるあの独特の匂いを探し当てる能力だ。

 

武山小の卒業生でもある父親が言った。
「昔の緑の国には池があった」
ならば、それも復活させなければ……。

 

水脈を探し出し、池を作ることになった。頼れる親父たちの中には、パワーショベルを手配できる者がいた。そしてついに池ができあがった。

今後が楽しみなビオトープ。ビオトープ:さまざまな生き物が共生できる場所

 

〜認められた『みどりのくに』〜
プロジェクト発足からわずか2年、『みどりのくに』に朗報が届いた。

 

横須賀市が開催する第5回横須賀eco大賞 学校・園部門賞に『みどりのくに』プロジェクトが選ばれた。

 

更には、公益財団法人 日本生態系協会が主催する全国学校・園庭ビオトープコンクール2015に於いて、日本生態系協会賞も受賞したのだ。

学校に飾られている賞状

 

頼れる親父たちにとって、『みどりのくに』に子どもたちの笑い声が響き渡るのがこの上ない喜びであり、何よりものご褒美だった。そこへ、賞というご褒美がさらに与えられた。大人も子どもも褒められるのが嬉しいのは変わらない。

 

しかし、まだまだ課題がある。この池をビオトープとして維持していかなければならない。外来種などの生物を排除し、生態系を維持するには、定期的な管理が必要だ。それにまだ、この池に棲む生物も少ない。ビオトープの有識者に相談し、更なる環境改善に現在取り組んでいる。

 

39年前に完成した『緑の国』

 

今回復活した『みどりのくに』

 

この先大きな変化は無いかもしれない。しかし、自然環境や生態系といったものと触れ合える場所が身近にあるということは、子どもたちの野外活動や学習、遊びに大きな変化を与えるだろう。

 

大人からの宿題だ。
子どもたち、明日は何して遊ぶ?
本能と遊べ!